真のテニスファンなら、必ず持っていた夢が一個あります。それは自前のテニスコートを作ることです。あなたはそれを考えたことがありませんか。なかったら真のテニスファンの仲間外れになりますね(笑)。
さて、自分でテニスコートを作るなら、建設と維持にはそれぞれどのぐらいの費用が掛かるのでしょうか。この記事で詳しく説明します。テニスコートの予約にお手伝いするテニスのコート様です。よろしくお願いいたします。
土地代
まずはテニスコートの面積をチェックしましょう。下記の絵は公式試合用テニスコートの最小限のサイズを示しています。ボールが「イン」と判定されるエリア(つまり、ベースライン+サイドラインの外縁)は縦 23.77m × 横 10.97mと規定されています。そのほか、後方に6.40m以上、横に3.66m以上のスペースも確保しなければいけないので、合わせて36.57m × 18.29m = 669㎡となります。なんと200坪も超え、一軒家3棟を余裕で建てる面積です!
レクリエーション(趣味)用コートであれば、周りのスペースを少し我慢する選択肢もありますが、国際テニス連盟(ITF)から、後方に5.49m以上、横に3.05m以上と推奨されています。その面積が約593㎡となります。
- ラインアンパイアも配置される国際公式大会の場合、後方に8.23m以上、横に4.57m以上のスペースが求められています。
各種コートの寸法は下記の表でまとめます。
後方スペース(m) | 全長(m) | サイドスペース(m) | 全幅(m) | 総面積(㎡) | |
---|---|---|---|---|---|
プレイエリア(枠線による四角形) | 0 | 23.77 | 0 | 10.97 | 261 |
レクリエーション(推奨) | 5.49 | 34.75 | 3.05 | 17.07 | 593 |
公式試合 | 6.40 | 36.57 | 3.66 | 18.29 | 669 |
国際公式大会 | 8.23 | 40.23 | 4.57 | 20.11 | 809 |
さて、コート一面分の土地はどのくらいの値段がするのでしょうか。それは立地によって大きく変わりますので一概には言えませんが、首都圏内の住宅街であれば、夢を潰す値段になりそうなので、一応土地が確保済みとしておきましょう(^_^)。
建設費用
テニスコートの建設費用に関しては、概ね1コートあたり1000万円程度という説が多いですが、本記事はその費用の内訳を詳しく説明します。もちろん工事費用は施工業者と地域によって大きく変わることもありますので、参考程度にしてください。
一般的に、建設工事で請求される費用には、直接工事費のほかに、間接工事費も含まれています。直接工事費とは、工事目的物を建設するために直接必要となる材料費、労務費、機械経費などを指します。一方、間接工事費は施工を可能にするための仮設備や現場事務所の設置など、共通的な経費を指します。一部の業者はカタログで標準価格を公開していますが、その価格は通常間接工事費を含んでいませんので、総費用と勘違いしてはいけません。直接工事費と間接工事費それぞれの仕組みについては、以下に説明します。
直接工事費
テニスコートの建設に必要な直接工事費は、概ねに以下の4種類に分けられます。
- 下地を平にする整地費用
- 舗装の工事費と材料費
- ネット・支柱などの必須道具の設置費用
- 照明や審判台などのオプション道具の設置費用
そのうち、4は必須ではないので、本記事は最小限コストを解説する観点から、無しとします。1と3はコートの種類にあまり依存しないので、ざっくり300万円とみておきましょう。2は舗装材の種類によって大きく変わりますので、以下に素材別に費用を解説します。価格は主に(株)ソイルリサイクル工業様が公開している総合カタログを参考にしています。コートサイズは600㎡と想定します。
砂入り人工芝コート(オムニコート)
砂入り人工芝は日本では最も馴染みの深いコート素材と言えます。「オムニコート」と呼ばれることも多いですが、それは同素材メーカーの代表格である住友ゴム工業株式会社の商標登録製品でした。正式的な名称は砂入り人工芝コートです。
砂入り人工芝コートは透水性優れ、雨の中でもプレー可能なので、降雨日数が平均で年間100日を超える日本では人気が高いです。
舗装工事の参考価格は1平方メートル当たり7,350円 です。600㎡の場合、総額441万円との計算になります。
- インターネットでは、オムニコートの建設には、1,000万円の工事費のほか、1平方メートル当たり12,000円の材料代がかかるとの説もありますが、それは一般的な相場ではありません。1,000万円もあれば、基本仕様の砂入り人工芝コートが余裕で作れます。
ハードコート
「ハードコート」というものですが、厳密に言うと最表面のコーティング材はゴムチップやウレタンなど、複数のバリエーションが存在します。その材料によってコストも大きく変わります。その中で最も広く使われているのはアクリル樹脂を主成分とし、珪砂を混入したサーフェス材です。その材料を使った舗装工事の参考価格は1平方メートル当たり7,950円 です。600㎡の総額は477万円との計算になります。
クレーコート
ハードコートと似たような事情で、通称クレーコートも、使われる舗装土の種類によって建設費用が大きく変わります。その中で一番手が届きやすいのは真砂土舗装です。関東圏では岩瀬砂とも呼ばれていますが、水はけ良く、砂ぼこりも飛散しにくいので運動場には広く使われています。その分、流通量も多いので値段も抑えられています。舗装工事の参考価格は1平方メートル当たり2,950円 です。600㎡の総額は177万円となります。
- クレーコートの最上級舗装材はアンツーカーと言い、通称レッドクレーのものですが、その参考価格は1平方メートル当たり8,590円です。
その他
上記の3種類のほか、テニスコートの分類上では天然芝コートとカーペットコートもありますが、前者のメンテナンスコストはとても高く、後者はインドアしか運用できないので、どちらも個人オーナーに向いていません。によって本記事では割愛させていただきます。
間接工事費
前文で説明したとおり、間接工事費とは、工事において間接的に必要となる費用のことです。公共工事の場合、「一般管理費」「現場管理費」「共通仮設費」と細かく分けて記載されますが、民間工事では諸経費と呼ばれることが多く、直接工事費に対して一定の費率を用いて算出することが多いです。その費率の相場は5%~10%とされていますが、会社によってかなりの幅があります。一般的に、会社が大きいほど、費率が上がる傾向があります。気になる場合、その内訳をきちんと説明してもらいましょう。
維持費用
テニスコートのメンテナンスも大事ですが、日常メンテナンスは自力でやる前提であれば、大した費用がかかりません。ただし、コートの素材によって手間がだいぶ違います。そのほか、年数がたったら劣化が進みますので、数年に一度補修を行う必要もあります。その工事の費用もコートの素材によります。以下に素材別にメンテナンスのポイントと補修費用を解説します。
砂入り人工芝コート(オムニコート)
砂入り人工芝コートのメンテナンスにおいては、二つのポイントが大事です。
- 使用後にブラシを掛けて、砂を均一な状態に保つこと
- 砂が沈むなどして少なくなった時は、砂の補充を行うこと
いずれも砂の減少による芝の摩耗を防ぐ目的で、コートの寿命を延ばすには不可欠な取り組みですが、ブラッシング自体はお金がかからないし、砂の補充も年一回で数千円で済むので、大きな負担になりません。使用する砂は特殊調整砂と呼ばれていますが、基本はふるいに掛けて粒の大きさを調整した珪砂です。相場は約100円/kgで高めですが、こだわりがなかったらホームセンターで売っている珪砂5号(約50円/kg)で代用可能です。
補修のことですが、人工芝の摩耗が進むとパイルがどんどん短くなって、5mm以下になったら根本の株が見えてきて、張替の目安になります。そのほか、使用頻度の高い部分のジョイント部の接着力が低下して剥離する場合もあります。剥離が起こると転倒やケガなどの原因になりますので、早めに張り替えたほうがよいです。
上記の症状があるから、人工芝の寿命は10年前後と言われています。ただし、コートのコンディションに応じて部分的に補修することが可能です。よくあるパターンはベースライン周りのみ張り替えることです。その対象面積は100㎡前後で、約70万円の工事費で済みます。によって、砂入り人工芝コートは全般的なメンテナンスコストが低いと言えます。
ハードコート
ハードコートの日常メンテナンスがほとんど不要で非常に楽ですが、年数がたったらひび割れや表面の剥がれなど、様々な症状が出始めますので、約7年に一度補修工事が必要と考えておいたほうがいいです。補修工事の費用は、コートの劣化状況にもよりますが、おおよそ70万円前後です。
クレーコート
前文で説明したとおり、クレーコートは比較的に安い費用で作れます。その一方で、メンテナンスは非常に手間がかかります。ようは、常に適切な水分を含むように調整する必要があります。乾燥しすぎるとクラックが発生しますし、濡れたら泥濘で使えなくなります。使わない時も常にコートのコンディションをチェックし、乾燥状況に応じて施策する必要があります。具体的に、以下のメンテナンスが勧められています。
- プレーをする前に散水する。
- プレー終了後にブラッシングする。
- 雨降り後にローラー転圧を行う。
- 使わない時も定期的に散水とローラー転圧を行う。
- 冬場に塩化カルシウムを散布し、凍結を防ぐ。
- 夏場も塩化カルシウムを散布し、砂埃の発生を抑制する。
このような手間はお金がかからないとしても、時間はお金で買えないので、正直個人オーナーにはあまりお勧めしません。
一方、日常メンテナンスも限界があって、下記の症状が酷くなったら補修工事が必要と思われます。
- 局所的な沈下による不陸
- 大きな亀裂
- ラインテープの剥がれ
- 水はけの悪化
工事の頻度はメンテナンスの質に大きく依存しますが、5年に必ず一度が必要と言われています。工事費用は60万円前後で低めですが、頻度が高めなので、全般的なメンテナンスコストは高めです。
まとめ
以上、自前のテニスコートを作る場合かかる費用をコート種類別で解説しました。わかりやすくするためテーブルでまとめます。あくまでも目安なので、土地の状況や仕上がりによって費用が倍以上あがることもあるとご了承ください。
600㎡のコート一面、土地を確保したうえの費用の試算です。
(単位:万円) | オムニ | ハード | クレー | |
---|---|---|---|---|
建設費 | 整地と道具設置 | 300 | 300 | 300 |
舗装工事費 | 441 | 477 | 177 | |
間接工事費 | 74 | 78 | 48 | |
消費税 | 82 | 85 | 52 | |
合計 | 897 | 940 | 577 | |
年間維持費(通算) | 7 | 10 | 12 |
いかがでしょうか。自前のテニスコートと言うものは、決して安いと言えませんが、手の届かない夢でもないですね。
最後に、いくつか役に立ちそうなリンクを貼っておきます。まだその夢が残っているなら、リンク先を参考にして、一歩踏み出してみましょう。最初の一歩が大事です!
リンク集
- テニスコートのつくり方講座
- テニスコート専門会社が教えてくれる、コート建設に関する大事なポイントをまとめたサイトです。
- 「テニスコート」向けの製品・サービス
- 日本体育施設様のサイトで、各種舗装の特徴と施工方法を詳しく解説してくれます。
- ダステート舗装総合カタログ
- (株)ソイルリサイクル工業様が公開している舗装工事のカタログです。各種舗装材の特徴と参考価格を詳しく説明しています。少し古かったので、最近の物価高騰を反映させていません。興味があれば最新のカタログを請求してみてください。
- オムニビルダ-
- 砂入り人工芝コートのDIYを推しているテニスクラブの経営者が作ったサイトです。テニスコートのDIYに関して色々なアドバイスをくれます。各種費用の相場も詳しく説明しています。
- 21世紀の森公園テニスコート補修工事設計書
- いわき市が公開しているテニスコート補修工事の設計書です。設計書に慣れてない方は4ページ目の内容を読んでください。2面の砂入り人工芝コートの張替工事の費用の明細が記載されています。令和6年度の工事なので最新の相場です。この工事の間接工事費は約100%にも及びますが、公共工事だからそのような傾向がありますので一旦無視してください。
- テニスコート作りの日記
- 自力でクレーコートを作った千葉在住のテニスコーチの奮闘記です。涙あり笑いありリアルな物語でした。